医療機器物流における品質管理のポイントとは?
よくある問題と解決策をご紹介
そこで本記事では、医療機器の物流品質でよくある課題と物流品質を高めるポイントを解説します。
医療機器の物流品質でよくある5つの課題
医療機器の物流では適切な品質管理が求められますが、実際には以下のような課題が発生しています。本章では5つの課題をご紹介します。
①適用される規制要求事項への適合
医療機器の物流業務を行う場合にはさまざまな規制要求事項があり、法令遵守体制を整え、現場の運用を適切に行うことが重要です。 例えば、以下のような内容を理解し、網羅した手順書やマニュアルを作成し、それに則った作業を行うことが品質管理をする上で欠かせないポイントとなります。
- 薬機法許認可の取得
- QMS省令の遵守
- 医療機器の特性に合わせた取り扱い分類・クラスを理解した運用
- 責任技術者の配置
- 手順書・作業マニュアルの作成及び教育訓練の実施
- ロット番号、シリアルナンバー、使用期限の厳密な管理
この他にもさまざまな対応が必要であることから、専門的な知識を身に着け適切な対応を求められますが、すべての要求事項に対応することは困難です。 法律を理解し遵守した上で、運用するための体制を構築するには多くの人と時間が必要となります。
②温度・衛生の管理
医療機器には、温度や湿度などの環境条件によって品質が変化するものもあります。
例えば温度管理に関しては、製品ごとに常温、微温や冷所など定められた温度帯があり、保管するにあたっては、保管環境の維持に必要な空調機の設置など、設備投資が必要です。
温度管理については倉庫での保管のみならず、運搬する際の車両にもその環境の準備が求められます。 湿度についても、温度と同様、特に夏場の高温多湿となる時期への対策は重要です。 また、保管が難しい製品として、危険物を含む製品を取り扱う場合には、危険物倉庫での保管が必要となるなど、製品の特性に適した倉庫を選定して保管をする必要もあります。
③不十分な在庫管理による欠品の発生
在庫を適切に管理できていないと、受注したときに欠品が発生し、製品を確実に届けることができなくなってしまいます。 また、人々の健康に影響を及ぼす医療機器には使用期限が定められているため、品質を担保するためには、徹底した在庫管理が求められています。そのため、必要な時に、必要な医療機器を正確に届けられるよう、常に適切な在庫を把握しておくことが重要です。
他にも、医療機器の安全性やリスク管理のために、出荷判定された製品についてのトレーサビリティ管理が求められます。こういったトレーサビリティの確保は、回収ロットの追跡や製品の取り違え防止として医療機器物流業界では必須となっています。
④繁忙期等の物流波動により著しく増加する物流コスト
季節や社会情勢などにより上下する物流の波を「物流波動」と言います。これは波動が大きいほど物流量の変動が大きいことを表しています。 特に繁忙期と呼ばれる時期は、大量の物量をさばけるだけの倉庫やトラック、人員を準備して対応する必要が生じ、この物流波動の影響は医療機器業界でも例外ではありません。
こういった物流波動への対応は、人件費や配送費等の著し増加となるだけでなく、人的な作業ミスの発生や誤出荷・配送遅延といったトラブルへの原因となり、クレームや顧客満足度の低下にもつながる可能性があります。 繁忙期であってもいかにコストをかけず、製品を安定供給できるかが、医療機器物流においても重要です。
⑤急配依頼や頻回配送への対応
医療機器物流は急配依頼や頻回配送が多い特徴があり、そのような対応の際にも、効率よく、輸送を行うことが求められます。場合によっては搬入日の変更などもあり、製品の品質を保ちながら保管できる体制・リソースの確保を常に管理する必要があります。
また、緊急性が高い製品も多いため、配送リードタイムは重要視されています。そのため、立地は非常に重要となり、公共交通機関のアクセスがよく、空港に近い場所に位置することが望ましいでしょう。
医療機器物流で品質が管理されていないことで起こるリスク
医療機器の物流において、ご紹介したような課題を解決できず、物流品質が保たれていない場合、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
- 法令違反による物流ストップのリスク
- 不適切管理による製品の毀損
- 製品の不具合における危害の発生と拡大
- 製品の安定供給への障害
- 必要なものを、必要なときに、必要なだけ供給することができない
特に医療機器については不具合があった際、健康や命にかかわる事態となることも考えられ、責任が問われ、企業の信頼損失につながってしまう可能性があります。
医療機器の物流品質を高めるために、押さえるべき5つのポイント
では、医療機器物流において、品質を高めるために押さえるべきポイントは何があるでしょうか? 本章では、重要な5つのポイントをご紹介します。
①品質を保証するシステムの構築
品質マネジメントシステムとは、製品の品質向上・改善に向けた「組織運営のルール」「経営の仕組み」のことであり、日本の医療機器業界において、薬機法に基づいて定められているQMS省令は医療機器の品質管理を行う際の重要な指標となっています。
日本国内でのみの製造・流通を行う場合はQMS省令の遵守が求められますが、海外企業との取り引きを進める際には、国際規格である「ISO13485」を取得・遵守することで、製品の安全性の担保や医療機器の有効性を効果的に維持することが可能です。
しいては、顧客からの信頼性が高まり、円滑な取引に繋がります。
ISO13845の概要や取得メリットについては以下記事で詳しくご紹介していますのでご興味のある方はご覧ください。
ISO13485とは?その重要性やISO9001との違い、要求事項などを網羅的に解説!
②保管に適切な倉庫・安全性の高い輸送の確保
製品の保管で重要な観点は、製品にダメージを与えないために温度や湿度を適切に管理し、品質を一定に保つことです。温湿度の他にも、製品を安全に保管するための設備として、耐震性に優れた倉庫。施設内の設備としては、異物混入対策や情報セキュリティー面も重要な要素となります。
輸送面においても、輸送時の温度管理の徹底、輸送ダメージに耐えられる梱包、ドライバーへの徹底した教育体制など、輸送をより安全に行うためのポイントを押さえた輸送業者の活用が、品質を保つ上で重要です。
課題でもあったように、急配依頼や、搬入日の変更などがあり、このような状況にスムーズに対応できるように、事前に入念な輸送計画を立てておくことも大切です。
③高度な組織体制の構築
先述したように医療機器の物流はさまざまな法令に遵守する必要があるため、専門的な知識のある人材の育成・採用を進めることが重要です。また、責任技術者の配置・雇用も必須です。
専門的な人材を雇い、QMS省令やISO13485を遵守することはもちろんのことですが、作業をおこなう従業員の作業品質が低ければ意味がありません。そのため、従業員1人ひとりの作業レベルを力量調査により把握し、適切な教育を行っていく必要があります。
従業員のレベル向上のためには医療機器の品質担保に向けた作業のポイントや手順などをマニュアル化し、定期的かつ継続的に教育することが重要です。
また、各作業者が個人的な思い込みなどで作業をしてしまうと、品質低下を引き起こす要因となるため、作業手順書に則った作業を徹底させる環境を整えることも品質保持には必要です。
④管理システムの導入
医療機器物流においては、市場への出荷の決定をロットごと(ロットを構成しない医療機器等にあたっては製造番号又は製造記号ごと)に行い、その結果及び出荷記録を作成することが義務付けられています。ロット番号や製造番号、製造記号などの記載は品質管理において、徹底した管理が必要です。そうすることで、トレーサビリティの確保につながり、誤出荷や遅延を軽減することが可能となります。
管理は人の手ではなく、システムを導入することで製品の品質をより担保できます。システムの種類として、倉庫管理システムや在庫管理システム、入出庫管理システムなどが挙げられます。入出庫作業の際は、ハンディターミナルの利用も効果的です。
例えば、倉庫管理システムであれば、製品の在庫状況がリアルタイムに把握でき、入出荷管理や在庫の有効期限やロット番号管理も行えるため、トレーサビリティを実現し、品質向上を行うことが可能です。
⑤好立地な物流倉庫の構築
安定した製品の供給を維持するためには、配送リードタイムの短縮が重要な要素となります。それを実現するには、公共交通機関のアクセスが良い場所や空港に近い場所で物流倉庫を構える必要があります。特に、輸出入貨物の配送においては、配送時間による製品の破損リスクを削減するともに、配送コストの削減にも繋がります。
しかしながら、こういった場所は物流適地として認識されているため、需要が高く、新しく倉庫を構えるには難しい部分もあります。
物流品質の向上ができる業者にアウトソースするという手も
ご紹介した内容をすべて自社で対応することは難しく、特に医療機器製造業登録の申請・許可に時間を要します。
倉庫の設備を整えるにはコスト・人材が必要となり、仮に対応できたとしても、取り扱い製品の増加により保管場所がなくなってしまったり、限られたリソースでの運用では、作業が追い付かなくなってしまったりと、品質を維持する環境を十分に担保できないといった状況が起こりえます。
そこでおすすめなのが、物流業務をアウトソーシングすることで、物流のプロのノウハウを活用し、高品質な製品の安定供給を行っていくことです。
東神倉庫では、医療機器といったメディカル物流のアウトソーシングサービスを提供しており、旧薬事法改正時(2005年)からの取り扱い実績が豊富です。ご紹介したような課題を解決し、お客様に合った最適な物流提案を行うだけでなく、責任技術者といった専門的な人材や熟練スタッフの確保、管理システムを駆使した最適化などを実施し、安定供給を実現しております。
安定供給を可能にする東神倉庫の物流センターの場所や設備等は以下からご覧いただけます。
好立地に医療機器・化粧品物流センター開設
ご紹介したような品質課題に加えて、医療機器の物流アウトソーシング先を選定する際のポイントなどを知りたい方、ご興味のある方は以下資料をぜひご覧ください。
お役立ち資料
医療機器・化粧品物流における
品質向上のベストプラクティス