物流の2024年問題とは?
物流業界への影響と企業が取るべき対策

更新日 2023.12.25
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働き方改革関連法が制定されたことで、2024年からトラックドライバーの労働時間に上限が設定されます。これにより生じる諸問題を「2024年問題」といいます。現在でも人手不足が深刻化している物流業界にとって、2024年問題への対応は喫緊の課題です。
そこで本記事では、物流の2024年問題が業界にもたらす影響や課題、また課題への対応策を解説します。
物流の2024年問題とは?<br>物流業界への影響と企業が取るべき対策

物流の「2024年問題」とは?

物流の「2024年問題」とは、働き方改革関連法の制定によりトラックドライバーの時間外労働時間が制限されることで発生する問題の総称です。これにより、「輸送可能な貨物の減少」や「物流企業の利益減少」など、複数の議題が発生する恐れがあります。
2024年問題は物流企業に運送を委託している企業にも影響するため、多くの企業が知っておくべき内容です。

以降では、この2024年問題の発端となった働き方改革関連法による変更点や、制定された理由をご説明します。

働き方改革関連法制定による変更点

働き方改革関連法の制定による大きな変更点として、2024年4月1日以降、自動車運転の業務に対して、年間の時間外労働時間が960時間に制限されることが挙げられます。たとえば、1ヶ月の出勤日数が20日の場合、1日当たりの時間外労働時間が4時間に達すると、このラインを超えてしまいます。

その他、同一労働・同一賃金の実現、月60時間超の時間外労働の割増賃金引上げといった変更点があり、物流業界はそれに伴う人件費の増加に対応しなければなりません。上限規制への対応が難しい物流・運送企業も一定数存在するのが現状であり、残された期間でどのように対応するかが課題となっています

働き方改革関連法が制定された理由

働き方改革関連法では、「働く人が多様で柔軟な働き方を実現できること」を目的として、従来の時間外労働の上限規則の中に新しく自動車の運転業務の上限規則も追加されました。
2024年問題として大きなトピックとなっている働き方改革関連法は、2018年6月に成立し、2019年4月から段階的に施行されています。実際に、年5日の有給休暇取得の義務付けは2019年4月から制度化されています。

段階的に施行されている背景としては、少子高齢化に伴い人手不足が深刻化し、長時間労働が可能な働き手が減少していることや、介護、育児などと仕事を両立するための体制整備が進んでいないことがあります。特に、トラックドライバーは慢性的な人手不足や宅配需要の増加から長時間労働が常態化しており、2019年からいきなり規制を導入することは現実的でないとの判断から、2024年までの猶予が設けられました。
ちなみに、一般的な企業の時間外労働上限規則は、年720時間が適用されています。

2024年問題が物流業界にもたらす影響

本章では、2024年問題により物流・運送企業にどのような影響があるのかご紹介します。

①:輸送リソースの減少

1つ目の影響は、時間外労働の規制により、これまでよりもドライバー1人当たりの輸送量が減り、物流業界全体での輸送リソースが減少することです。
EC市場が急成長し、輸送に対する需要が増大する中でのリソースの減少は、需給ギャップを拡大させる結果となってしまいます。特に、医療機器などの緊急性が高いものに対応するリソースが確保できなくなると、大きなリスクが生じると考えられます。

②:物流企業の利益減少

2つ目は、物流企業の輸送量が減少する結果、売上・利益が減少するなど業績が悪化する可能性があることです。
2024年問題に対応することで、人件費は削減されると言われているものの、実際には車両の維持費やオフィスの賃料といった固定費は変わらないため、利益は少なくなる可能性があると言われています。
また、時間外労働が上限を超える場合、割増賃金になるため、時間外労働を大きく減らさない限り、人件費の劇的な削減は期待できません。

③:ドライバーの収入減少

3つ目はドライバーの収入減少です。物流ドライバーは時間外労働が当たり前のものとなっており、収入に占める時間外手当の割合が高い働き手も少なくありません。時間外労働時間の上限が設定されることで、これまで受け取っていた時間外手当が減り、手取りの収入が減少してしまうケースが考えられます
また、先述したように会社の業績が悪化することで、基本給の賃上げが進まない可能性もあります。

④:荷主の金銭的負担の増加

4つ目は荷主の金銭的負担の増加です。ご紹介したような物流企業の利益減少やドライバーの収入減少を、物流・運送企業へ業務委託している荷主から受け取る運賃を増加することで補おうとする動きが活発になると予想されます。これにより、荷主の金銭的な負担が増加する可能性があります。
このように、物流・運送企業だけでなく、荷物を預ける企業や、通販事業者・メーカー・小売店などにとっても2024年問題の影響は小さくありません。

物流コストの削減方法は、以下の記事でご紹介していますのでぜひご覧ください。
物流コストの削減方法とは?コストの内訳や増加する原因も解説

ご紹介したような影響から、2024年問題に適切に対応しなければ、モノを運ぶこと自体が難しくなり、輸送コストの高騰も懸念されます
では、今後物流業界はどのような課題を解決していけば良いのでしょうか。

2024年問題に向け物流業界が解決すべき課題

2024年問題に向け物流業界が解決すべき課題としては、大きく以下の2つがあります。

ドライバーの人手不足・高齢化

1つ目は、ドライバーの人手不足と高齢化の解消です。
厚生労働省の資料によると、貨物自動車運転手の有効求人倍率は1.89であり、全職業平均の0.95より約2倍高く、人手不足であることがわかります。実際に同資料によると2020年時点で約4割の企業が人手不足を感じているようです
こうした人手不足の中で2024年の関連法が適応されてしまえば、物流業界への大きな影響は避けられません。
また、同資料によると、道路貨物運送業の年齢構成は若年層の割合が低く、高齢層の割合が高いという傾向もあります。高齢者が多い場合、近い将来多くの労働者が引退してしまい、人手不足がさらに深刻化するため、若い人材の雇用が求められます。

ドライバーの人手不足・高齢化

出典:「物流をとりまく状況と物流標準化の重要性(令和3年6月17日)」(国土交通省)

作業の非効率さ

2つ目は物流業務・作業自体の非効率さです。昨今、ITをはじめさまざまな技術革新が進んでいますが、物流業務・作業は従来から変わらぬ業務形態のままである企業が多く、非効率な状態になっていることが珍しくありません。
たとえば、倉庫で荷物を受け取る際に待ち時間が生じていたり、ドライバーによって運送ルートが異なっていたりする事例が挙げられます。また、国土交通省によると、トラックの積載効率は減少の一途をたどっており、直近では約40%まで低下しています。このように、1回の輸送当たりの効率が悪くなっていることも業務が非効率になっている一因です。

作業の非効率さ

出典:「最近の物流政策について(令和3年1月22日)」(国土交通省)

物流業界の課題を解決するための対応策

前章でご紹介したような課題を解決するためにはどのような方策が必要になるのでしょうか。代表的な対応策を3つご紹介します。

働き方の柔軟性によるドライバー確保

1つ目は、人手不足解消に向けたドライバーの確保です。1人当たりの労働時間が制限される以上、増大する需要に応え、一定数のドライバーを確保しなければなりません。
ドライバーを確保するためには、「物流業界はブラックな環境」という印象を払拭し、多くの人が働きたいと思える業界に変えていく必要があります。そのため、労働環境や労働条件の改善、時短勤務など柔軟な働き方ができる環境整備を進めることが大切です
また、若い人材の確保に向けた福利厚生制度の充実なども1つの手段となります。

ITの活用による業務効率化

2つ目は、ITの活用による物流業務・作業の効率化です。
具体的には、先に挙げた待ち時間の課題に対しては「トラック予約システムの活用」、運送ルートの効率化に関しては「適切なカーナビシステムの導入」などが挙げられます。
その他、トラックの稼働率を向上させる車両管理システムや、トラックドライバーの管理を行えるシステム、ICTを活用した遠隔点呼なども効果的です。

実際に、近年では、物流プラットフォームといった荷主と配送者がプラットフォーム上でつながる「配送マッチングサービス」や「スマート物流サービス」が登場しており、国土交通省もこの物流プラットフォーム(SIPスマート物流サービス)の構築を物流DXに向けて提唱しています。

出典:「SIPスマート物流サービスの取組み(2020年9月17日)」(国土交通省)

最適な物流スキームの構築

3つ目は最適な物流スキームの構築です。
物流スキームとは、出荷から輸送完了までの計画のことであり、この物流スキームを最適化することで、無駄なく、リスクのない対応が実現できるようになります

特に医療機器の物流に関しては、徹底した温度管理・品質管理や、患者の治療スケジュールに合わせた迅速な配送が求められていることから、最適な物流スキームの構築が必須です。最近では、多くの企業・事業者間で共同スキームの構築も進んでいます。

2024年問題に向けた最適な物流体制を構築するならアウトソーシングがおすすめ

本記事の対応策の章でも解説した通り、今後物流業界で重要になっていくのが人・IT・計画を総動員した最適な物流体制の構築であり、自社だけで構築を行うことが難しい場合には、アウトソーシングがおすすめです。特に危険物や生命・健康にかかわる医療機器・化粧品の物流においては「品質」という面も考慮する必要があり、アウトソーシングを行ったほうが安全・安心な物流サービスを消費者に提供できます。

以下の記事で物流アウトソーシングのメリット・デメリットをご紹介していますので、こちらもご覧ください。
物流アウトソーシングのメリット・デメリットとは?ご検討される方へ

東神倉庫では、医療機器・化粧品物流に関する最適な物流を提案可能であり、在庫管理業務に関わる作業省力化や在庫リスク圧縮などを可能とする物流センターを構築しています。また、長年培った配送業務への知見・実績及び、複数の協力会社との協業の元、安定した物流を提供しております。

以下資料では、医療機器・化粧品物流における品質管理のポイントなどをご紹介していますので、自社で物流を担っており、物流品質を改善したい方や、今後物流品質向上に向けて委託を検討している方は、ぜひご覧ください。

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