化粧品物流の特徴や委託するメリットとは?
取扱品目や物流委託先の選定ポイントを解説
本記事では、化粧品物流の特徴や委託のメリット、委託先の選定ポイントを解説します。
化粧品物流の特徴
化粧品物流は、以下のような特徴を持っています。
化粧品製造業の許可が必要
化粧品は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)の適用対象であり、化粧品物流に携わるためには化粧品製造業許可を取得しなければなりません。国内で製造された化粧品や海外メーカーの輸入品の流通・販売工程における包装や表示、保管は製造行為の一部とみなされるため、外箱の梱包、海外製品のラベル貼り替えなども製造業許可が必要です。
温湿度管理が求められる
化粧品は温度変化に敏感であり、特に直射日光や高温の環境では品質が劣化する可能性があるため、適度な温度で保管することが大切です。また、化粧品に使用されているポリエチレングリコール(PEG)やグリセリンは吸湿度が高いため、湿度管理が必要になる場合もあります。
関連して、肌に直接触れる商品であるため衛生管理も重要です。
流通加工の工程は柔軟性が必要
化粧品はギフトとしての需要が高い商材であり、ラッピングといった特別な対応やセット組み作業などがしばしば発生します。特に冬場はクリスマスやホワイトデーがありギフト需要が急増するため、時期に応じて流通加工の体制を柔軟に変化させる必要があります。
販売チャネルが多様
BtoBの卸、百貨店、直営店、美容院のほか、近年はECも存在感が増しており、販売チャネルが多様化しています。それぞれの販売チャネルによって納品ルールが異なるため、販売チャネルに適した物流戦略や出荷体制を整えることが重要です。
危険物の取扱が必要なケースがある
引火性液体(アルコール類やアセトンなど)や自己反応物質など、消防法で危険物に指定される物質が含まれる商品は、法律により危険物倉庫で保管しなければならない場合があります(※保管数量による)。
製品の企画段階から、原材料・取扱数量の面で危険物として保管しなければならない可能性があるのか、その場合にはどのような流通経路に乗せることが求められるのかを確認しておくことが大切です。
危険物以外にも、高圧ガスの取扱に関して注意が必要なケースもあります。
危険物の取扱いには、自治体の条例(自治体によって規制内容が変わります。)を併せて確認・把握する必要があるため、化粧品物流を委託される際はパートナーとなる倉庫会社と共に確認することが必要です。
商品パンフレットや挨拶状、サンプル品など
顧客に合わせて変化させることも必要
初回顧客やリピーター向けに同梱する商品パンフレット、挨拶状、サンプル品などを使い分け、顧客印象に訴える戦略も顧客数を増やす取り組みを行ううえで必要不可欠です。
定期購入の場合、初回と2回目以降、あるいは誕生日月とそれ以外の月で商品ノベルティを変えるケースもあり、発送の内容や体制を柔軟に変化させることが求められます。
化粧品物流での一般的な配送の流れ
化粧品物流での配送の一般的な流れは以下の通りです。
検品
国内の製造拠点または海外から届いた化粧品の種類や数量が発注したものと同じか、また損傷がないか、異物がないかを確認します。なお、作業前には予め異物の判定基準であるサイズや色、形状等詳細を事前に取決め手順化し、作業を標準化しておきます。
ピッキングと梱包
受注が入ったら倉庫から当該の商品をピッキングし、梱包します。梱包時にギフト用のラッピングなど特別な対応が必要な場合もあります。
同梱物の確認と出荷ラベルの作成
商品パンフレットや挨拶状、サンプル品など、商品との同梱物に漏れがないかを確認します。また、出荷ラベルを作成し、送り先の住所、氏名、配送方法などもチェックします。
配送
運送業者に商品を引き渡し、販売店や消費者のもとへ配送します。
返品処理
商品到着後、商品に不備や不満点があった場合、返品されることがあります。返品後は、商品の品質チェックや商品交換の手続き、廃棄処理を行います。
返品時に確認する内容は、メーカーにとっては商品解析・改善に必須の情報であり、開発に活かすべき大切な情報です。
化粧品物流でよくある課題
先述したような特徴を持つ化粧品物流ですが、その特徴からさまざまな課題が発生します。
本章では、具体的に化粧品物流でどのような課題が発生するのかを解説します。
コストの増加
化粧品業界では販売方法が多様化しており、昨今ではEC通販への対応が必須です。それに伴い、人員の確保や保管スペースの確保に関して迅速な対応が求められており、それらによるコストの増加が課題です。
業務の圧迫
多様な販売方法を展開することで、企業全体として対応すべき範囲が広がり、業務量が増大します。対応する業務量が増えることで、新たな人員の確保が必要になったり、過大な業務負荷により社員のモチベーション低下や退職・休職にもつながったりといった課題が発生します。
物流品質の低下
先述の業務の圧迫が起こると、人員の配置変更や人的ミスが増え、物流品質の低下にもつながります。ミスの増加は顧客からのクレームや、顧客満足度・評判の低下をもたらし、最終的には売上にも影響を与えるため、避けなければなりません。
化粧品物流を委託するメリット
上記の課題は、化粧品物流を委託することで解決できる可能性があります。
では、化粧品物流を委託することで企業にどういったメリットがあるのでしょうか。
コストを削減できる
化粧品物流を委託することで、前章で紹介したような配送の一連の工程にかかわる人件費や倉庫の維持・管理費が不要になるため、トータルでのコスト削減が期待できます。化粧品は季節によって需要が変動しやすく、物流波動が大きいため、委託することで閑散期の人員・倉庫スペースの余剰発生を防ぐことができます。
コア業務にリソースを割ける
繊細な製品管理や梱包などが求められる化粧品の物流工程を自社で担う場合、ある程度の人数を物流工程に割かなければなりません。物流工程を委託できれば、これらの業務に充てていたリソースを商品企画・開発や販促、顧客のフォローといったより重要な業務に充てられます。
常に物流工程である作業現場に人員を割いている現状があるのであれば、改善可能な部分が多いとも言えます。
品質担保に繋がる
物流を専門に担っている会社であれば、検品から出荷までの作業を効率的かつ正確に行う環境を整えています。イレギュラーな対応が必要な場合でも専門の会社に依頼をすれば、品質を保ったまま商品を届けられる可能性が高いです。
物流業者、特に倉庫会社は自社商品ではない商品、複数企業の商品を取り扱うため、作業員の標準化を最優先事項としており、蓄積された実績・ノウハウを基に作成した作業マニュアルと作業員への教育により、属人化させない取り組みを行っています。
業務委託する際に注意しておくべきポイント
以上のようなメリットのある物流の委託ですが、委託する際には注意すべきポイントもあります。本章では3つのポイントを解説します。
化粧品製造許可を取得しているか
まずは、委託先の会社が薬機法に基づく化粧品製造許可を取得しているかを確認することが大前提必要です。無認可業者に物流を委託すると、委託元の企業も処罰の対象となるため注意が必要です。
作業員への教育や作業手順が徹底されているか
特に化粧品物流においては、ブランディングのために他社との差別化を行うべく、事細かで繊細な作業が多く求められます。作業の種類も多いため(自動化機器によるラッピングや梱包等を除き)、人的作業のウエイトが多くを占める場合は、出荷品の出来栄えと生産性の両立は作業員の品質に左右されます。
品質を維持向上させるためには、作業手順の徹底、標準化といった教育制度、運用体制を構築することが必須であり、将来にわたり恒常的に教育制度の運用を維持することが重要です。
運用時には、作業ごとの難易度設定や、各作業者の能力に応じた人員配置を行うことも求められます。たとえば、チーム制を採用し、作業者が不明な点を即確認できるよう不安を残さない体制・環境を整えているかを確認するとよいでしょう。
作業を標準化し品質を一定に保つことは、最終的に商品を手にするお客様の満足度に影響しますが、これはお客様の負担するコストにも直結します。包装や梱包方法の最適化、使用する緩衝材等の資材使用量を必要最小限に留める荷役技術は、作業員全員が熟知し、対応することが望ましいです。
このように、委託先の会社が「化粧品物流を適切に担える体制を整えているか」を注意して確認する必要があります。
拠点は好立地か
化粧品物流を担う体制が整っているか、を判断する場合には、「拠点の立地」も見る必要があります。作業拠点の周辺に住居エリアが隣接するなど、作業員を動員しやすい拠点は作業員の定着率も高い傾向があり、品質を高いレベルで維持することにつながります。
作業員の入れ替えが多い拠点は、作業員の品質を1から教育して高める必要があるため、拠点の立地条件の良さは、作業スピード、生産性にも関わる重要な点と言えます。
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